2006年10月03日

小説・喫茶店

47
 翌日、茂は元気に出勤してきた。
 みどりにも年始の挨拶をしてくれた。心の中の熱い思いと裏腹に、みどりはたんたんとありきたりの挨拶をした。でも、ただ微笑み合うだけで、とても満たされた感じがしたのだ。茂からのテレパシーも十分伝わったからかもしれなかった。
 その一方、家族の絆という器から、水が滴り落ちるような不安がよぎる。
 結婚している自分がこんな感情を抱くなんて思ってもみなかったことだ。
 みどりは自分を許せなかった。
 毎日こんこんと湧き出ている、透き通った水を、1滴たりとも、ぜったい零したくないという強い気持ちがフツフツと湧き上がってきたのだ。
 みどりにとっては、家族の絆は何ものにも変え難い大事なものである。
 それに比べると、茂は単なる職場の友人である。しかも、同じ職場でもない、間借り人みたいな存在である。何時居なくなるかも分からない人なのだ。
 タレントを好きになるファンのような気持ちでいればよい。
 結論は出ている。
 これ以上、茂とは親しくなってはいけないと。48へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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