2006年10月05日

小説・喫茶店

48
 六島は日本の西端に位置している。周りを海に囲まれているので温暖な住みやすい気候である。
 3月の声を聞くととたんにぐっと気温が上がりすっかり春のけはいが漂う。菜の花がここそこに咲き誇っているせいだろうか。
 茂はこの六島の景色が好きだった。季節毎に変わる海の色、山の色、田んぼの色。それらを全て、直に目の当たりに見ることが出来るのだ。それは大きな箱庭に美しい物を何もかも詰め込んで、いっぺんに観ているような感覚である。
 茂は4月で六島勤務丸1年を終えることになる。
 過去の例から、六島駐在はだいたい1年から1年半で終了し、本土へ帰還することになっているのだ。
 3月になってすぐ茂は熊本の本所へ呼び出された。
 かねてから話しがあっていたことだった。3月一杯で六島駐在を撤退する方針だと告げられた。
 茂は複雑な気持ちだった。離島勤務を終えて本所へ帰ることは、喜ぶべきことかもしれない。
 茂は自然相手の単独行動が、自分の地に会っていると感じている。将来もまた日本のどこかの国立公園へ駐在することになるだろう。
 六島では、自然との出会いの他に、人間との大事な出会いがあった。
 しかし、別れはすぐそこに迫っていた。49へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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