2006年10月13日

小説・喫茶店

52
 中には茂が待っているはずだった。なぜなら、駐車場に、いつも見慣れた四輪駆動車が、既に停まっていたのだ。
 店内は外から見るより広々として落ち着いた雰囲気だった。
 ドアベルのカランカランと鳴る音と同時に、ウエートレスが「いらっしゃいませ」と機械的に言った。
 満席ではなかったが、程よく混んでいる。
 何処に茂が座っているか、一見しただけでは分からない。立ちすくんでいると
「こっち」と茂が後から肩をたたいた。
 見えなかったが入口の直ぐ横に、観葉植物が置かれた台で仕切られた席があったのだ。
 茂はみどりを席に案内すると
「僕も今着いたんだ」と言った。
「そうだったの、ちょうどよかったね。久しぶりよ、こんな所でお昼するのは」
 みどりは頬を少し上気させていた。平常心を保とうと思っても胸のドキドキが治まらない。いつもならお腹が空いてたまらない時刻なのに全く食欲も感じないのだ。
「何がいい?」メニューを開きながら茂が言った。
「早く出来るものがいいんじゃない?」
「喫茶店だから、簡単なものしかないんだ。でもこのお手軽ランチならまあまあいけるし、早く出来ると思うよ」
「それにする」みどりは、言下に同意した。ホントは食事などどうでもよかった。とにかくお昼休みの間に話を聞き終らせなければならなかった。
 ちょうどその時ウエートレスがお冷を持ってオーダーを取りにきた。53へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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