2006年10月31日

小説・喫茶店

61
 水をかけられても、頬をぶたれても、怒りは湧いてこなかった。むしろ、そのことで返って気が楽になっていた。
 遙にはやはり荒療治過ぎたのだろうか?離れていけば自然消滅するかもしれないのに、自分が早くすっきりしたいばかりに、先を急ぎ過ぎたのかもしれない。
 茂は、自己嫌悪に陥っていた。
 遙が立ち去ってから、何本たばこを吸っただろうか。
 ウエートレスが「大丈夫ですか」とおしぼりの換えを持ってきた。
 幸い、一段下がったフロアーにあるこの席は、他の席から見えにくい。同じフロアーの隣にあるあと1席も偶然、空席のままだった。ということは、茂と遙が繰り成した異様な光景は、客には殆んど気付かれなかったのだ。
 ただ、ウエートレスだけは、ただならぬ様子でマロニエを出ていった遙を見て、察しがついているようだった。
 興味深そうに茂の様子を見にきたのだ。
「いや、大丈夫です。コーヒーお代わりください」
 茂は、冷たくなったコーヒーカップを差し出した。62へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 11:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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