2006年11月02日

小説・喫茶店

62
 既に学校は春休みに入っている。幸い、遙は転勤は免れたものの、新学期に向けて仕事は限りなくあった。
 学校で仕事をしていると、何とか平常心を保つことが出来ている。遙は4年生から5年生になる生徒を、引き続き受け持つことになった。3クラスある5年生を受け持つ先生の中で、遙が1番若い。当然、雑務を一切引き受けた。そのため残業もかってでた。そうすることによって、何とか日々を過ごせていた。
 これが積み重なって、いつか傷も癒え、茂が過去の人になり、良い思い出に変わっていくのだろうか。
 今まで過ごした茂とのことが、まるで遠い夢の中の出来事に思えるが、悲しいことに、何1つ楽しいことはなかった気がする。
 たいていはイライラしていた。彼のちょっとした言動に一喜一憂している憐れな自分の姿しか、思い出せない。
 茂るから「愛している」と、言われたことはなかった。
 いつも「愛している」と言っていたのは遙だった。その時は、それでも嬉しかったし幸せだった。
 彼が、自分を愛していなかったと、思いたくない。
 少なくとも、彼からのアタックから始まった愛だった。
 会えば肌を重ねていた。その時、彼の身体からは、確かな愛を感じた。
 でも、そういえば、それも一瞬で、肌を離せば、いつも空しさだけが残っていた。
 遙は、いつかはこうなることが分かっていたような気が、今改めてしていたのである。63へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
posted by hidamari at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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