2006年11月04日

小説・喫茶店

63
 携帯が鳴る度に、茂は、遙からではないかとヒヤヒヤしていた。しかし、遙からはあれっきり何の音沙汰もなかった。
 もう1度くらいは、呼び出されて、怒りをぶつけられるものと覚悟していた茂は、ホッとする反面、拍子抜けした感もしていた。
 遙は勝気でしっかりものだ。ダンスもすぐうまくなった。何事においても完ぺきだった。それ故、他人には決して弱みを見せず、プライドも高い。
 よく考えれば、遙に限って、決して2度と、泣き言を言ったりはしないだろう。
 頭の良い女だ。いくら引き止めても、茂の気持ちがもう戻らないことを分かっているのだ。
 2度と会わないのが、せめてもの女の意地なのだ。
 茂は健気な遙を思って、改めて自分の傲慢さを申しわけなく思った。
 これを機に、茂は、女性を2度と泣かせることはするまい、と真面目に反省したのだ。
 明日、3月31日、茂はいよいよ六島を後にして、熊本へ戻る。1年間の短い期間だったが、六島は、茂にとって忘れられない土地になった。64へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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