2007年10月18日

小説・優しい背中

bR
 オフィスの入口は絵里子の机の前方にあった。社員が出社してくる朝のしばらくはそのドアは開け放たれている。 そこから朝日も入っていた。そろそろ始業時刻の9時になろうとしていた時だった。逆光で顔は定かではないが、光線を背に1人の男性が入ってきた。
 肩幅が広かった。身体が引き締まっていた。そのシルエットは渡哲也風だったが身長は優に180センチは越えているだろう。
 絵里子は、来客だと思った。しかし、次の瞬間、「もしや、これが新支社長?」とも思った。まさか、こんなかっこいい男性であるはずがないと、すぐ打ち消した。
 その男性は真っ直ぐに絵里子の机の側まできた。そして、おもむろに、
 「副支社長はどちらですか?」と、言った。
 その瞬間、絵里子は、新支社長の柴谷祐樹に間違いないと確信した。
 「ああ、支社長でいらっしゃいますか。お待ち致しておりました。どうぞこちらへ」
 絵里子は直立していんぎん過ぎるほど、深々と頭を下げた。
 柴谷のことを、前支社長から鼻持ちならぬ高慢な人物と聞かされていた。しかし、イメージしていたのとは、だいぶ違っていた。一言で表現すると、さわやかだった。
 年齢は絵里子より3歳も若い39歳と聞いていた。だが、地位がそう見せるのか、とても年下には見えない。しかし、そのきりっとした若さは、絵里子には、初々しく、異様にまぶしかったのである。
 こんな男性が支社長になるからには、やはりこの会社も変わっていくのだろう、と緊張せざるをえなかった。
 前支社長は、気さくな人柄だった。絵里子だけでなく社員とは誰とでも和気藹々で、いつでも気楽に対話が出来る存在だった。
 飲み会で、下ネタの話に及ぶことがある。そんな時も絵里子は、笑って受け流すことが出来た。しかし、柴谷はそんな風に親しみを持てるような感じではない。どこか自分たちとは違う世界の人に感じられた。
 柴谷は、あくまでも、支社を改革するために使わされた、言わば社員にとっては敵なのだから、絶対心を許すまいと、絵里子は改めて思うのだった。bSへ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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