2007年10月22日

小説・優しい背中

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 支社長室へはオフィスを通り抜けないと行けなかった。絵里子の席は、支社長室の通路に面している。つまり、柴谷は絵里子の席の前を通って支社長室へ出入りするのである。
 柴谷は、就任後2日間、殆んど席を外していた。福岡市内の関係者への挨拶回りだった。副支社長の荒井健介が社用車の運転を兼ねて同行した。51歳になる荒井は、常に柴谷より1歩下がって歩いているが、知らない人が見れば完全に荒井の方が上役に見えるだろう。荒井は、身長は柴谷に比べて頭1つ低いが、がっちりしているので、貫禄十分なのだ。
 しかし、上下関係ははっきりしている。荒井はちゃんとわきまえて気の毒なほど、柴谷に気を使っていた。
 「支社長は何でもよく知っているし、数字もよく覚えておられる。さすがエリートだよ」と、荒井は手離しに柴谷を誉めた。既に一目置いているようだった。
 その荒井が、まずは総務企画だけで歓迎会をやろう、と絵里子に提案してきた。
 絵里子は、荒井がさっそく柴谷に対してゴマをすっているようで、いやな気持ちがしないではなかった。
 総務企画部には、絵里子の他に、38歳の山中学と、24歳の平林啓太がいた。絵里子が便宜上部長ということもあるが、荒井は勤務年数が1番長い絵里子を誰より頼りにしていたので、何でもよく絵里子に相談をもちかけてくるのだ。
 社内親睦会会則で、歓迎会は行うことになっている。おっつけ幹事が計画をたてて開かれることは分かっている。
 何も5人だけでやらなくても、と思ったが、敢えて反対するのも不自然だった。
 他の2人も「いいですよ」と、言った。
 段取りは荒井がとり、その週の金曜日に、荒井の行きつけである小料理屋で、さっそく歓迎会が開かれることになったのである。bUへ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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