2007年10月30日

小説・優しい背中

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 仕事上での柴谷は、絵里子にとっては雲の上の存在というより煙たい存在だった。
 今まで気がつかなかった無駄を指摘し、どんどん改革していった。一方では、販売シェアも上がっていた。
 柴谷は、たいてい部屋にいなかった。外へ出て行く時は、営業部の社員を時々は同行させたが、1人でも社用車を走らせ飛びまわっていた。
 絵里子は、部屋に柴谷がいない方が楽だった。その方がのびのびと仕事が出来るのだ。
 絵里子の仕事は、机上の仕事が主である。データ―をとったり、集めたり、分析したり、それによって、販売企画を作っていく。
 柴谷が県外出張で部屋を空けている時は、特に仕事がはかどったし、アイディアも浮かんだ。かといって、長期の出張となると、どことなく拍子抜けした気分になるのを、絵里子は最近自分で気がついていた。柴谷が、仕事における重石のような存在だったのだ。支社長に認められたいという気持ちが常に働いているのだろう。
 柴谷と絵里子はあれ以来、スポーツクラブで顔を合わせることはなかった。
 絵里子は、元々土曜日をスイミングに当てていたのだ。
 それゆえ、柴谷とスポーツクラブで会うことなど、全く想定していなかった。
 土曜日のその日、30分ほど泳いだ絵里子は、ちょっと休憩するため、プールサイドのベンチへ向かって歩いていた。
 「やあ、もう終わり?」
 後からいきなり声をかけてきた男性がいた。振り向くと、そこに柴谷が立っていた。
 「あら! 支、支社長!」
 絵里子は動揺を隠し切れなかった。10へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 23:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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