2007年11月03日

小説・優しい背中

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 プールサイドのベンチで柴谷と絵里子が話したのは、ほんのわずかな時間だった。しかも話しの内容は、泳ぎのことばかりだった。それなのに、絵里子はそれ以来、柴谷に対する想いが、一変したのである。
 それは、それまでありえないと思っていたことだった。
それは絵里子にも、なぜだか分からない気持ちの変化だったが、1つは、柴谷が絵里子に関心を持ってくれていることを感じ取ったからかもしれない。絵里子はとにかくそれ以来、柴谷を男性として見るようになっていた。
 それは結婚以来、夫以外の男性に初めて抱いた感情だった。
 絵里子が予想もしないことだった。
 なぜなら、絵里子の家庭生活はとても幸せだったし、充実していた。仕事を通して男性とは常に接している。どんなにハンサムでも、たとえちょっとした拍子に誘惑されることがあっても、絵里子の気持ちに、恋愛感情など湧くことはなかった。それは、何の揺るぎもなく、これからも生涯そんな感情は湧かないものと思っていた。もちろん、それは絵里子が特別に理性で抑えているわけではなく、ごく普通の感性だったのだ。
 ただ、女性、男性にかかわらず、人間関係で悩むことは多々あったし、当然、人間としての好き嫌いは、男性に対してもあったのではあるが。12へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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