2007年11月06日

未生流活花


未生流活花.jpg 昔風の甘酒
 所用で郊外の道路を車で走っていた時のこと。道路端のとある酒屋さんの店先に『昔風の甘酒あります』と書いた貼り紙があるのを発見した。
 昔風の甘酒!
 私の心は多いに揺れた。飲んでみたい。
 でも何しろ車を運転している。急に止まれない。あっという間に通り過ぎてしまった。

 亡き母が、秋のお宮日が来ると必ず作っていたあの懐かしい甘酒と同じ味がするのなら、是が非でも飲んでみたいと思った。

 幼い頃、その日に出来る麹を、麹屋さんへ朝早く買いに行くのが私たち子供の役目だった。
 母は、それを炊いた米と混ぜて、壷に入れ寝かせる。早く熟成するように壷に新聞紙と布を巻いた。
 私たち姉妹は母の作るこの甘酒が大好きだった。
 毎日毎日、「もう飲んでもいい?」と母にせがんだ。
 サラサラになってしまうと、完全にどぶ酒になってしまう。米粒の味が残っている具合がちょうどいい。
 母はその頃合を見て私たちに振舞った。フワンとお米の香りが口の中に広がり、何ともいえない風味だった。
 毎年お宮日が来るのが楽しみだった。

 次姉が高校生の頃、学校から帰るなり、家人に隠れてこの甘酒を腹一杯飲んだ事件がおきた。無くなりかけで底の方に少しあるだけだったので、誰かが飲んだことはすぐ分かった。母は、
 「誰が飲んだの?」と私たち姉妹に。
 「知らない」「知らない」と子供たち。ところがそう言いながら、次姉がだんだん青ざめてフラフラになり、ついには倒れてしまったのだ。空きっ腹だったらしく、悪酔いしたのであった。
 母は、もうお酒になっているから飲まないように言おうと思ったのに、と悔しがった。
 後日次姉は、「死ぬかと思った」と言った。
 私たちは大笑いした。

 母は、私が結婚した後も「貴方が好きだから」としばらくは作ってくれていたが、いつの頃からかそれも途絶えた。
 それ以後私は、こんな貼り紙に誘惑されて、何回も買って飲んだことがあるが、未だかって母の懐かしい味に会ったためしがない。
 きっと、あのお店のも…。
 今ではすっかり諦めているが、昔風…などと書いてあると、つい心が動かされるのである。
 

(写真は、公民館の文化祭に出してあった活花)
 
posted by hidamari at 17:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 花・草木・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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