2007年11月07日

小説・優しい背中

13
 6月は梅雨の時期と連想しがちだが、実際は晴天の日が多い。
 その年もなかなか雨は降らなかった。仕方なく農家は、堰を切ってもなお足らない所は、川から水をひいて、田植えを始めていた。
 絵里子は、夫と娘の3人でこの郊外の1戸建てに、この春越したばかりだった。念願のマイホームだった。周りには田んぼや畑がまだまだたくさん残っている。というより、田園の中に出来た小さな団地だった。
 夫の泰三はガス会社に勤め、娘の里美は県立高校2年生である。それぞれ方向が違う所に通っている。
 郊外に住んでいる一家には、車2台は必需品だった。
 泰三は一足先に自分の車で家を出る。絵里子は、絵里子専用の車で、最寄の駅まで里美を同乗させて行くのが日課である。
 駅まで行く道路の両側に田んぼが広がっているのだ。その長閑な風景の中を走行する時、絵里子はこの上ない幸せを感じるのだった。
 夫がいて、娘がいて、マイホームがあって、私にも仕事がある。それにマイカーに娘を乗せて、これから出勤しようとしている自分。何て幸せなんだろう。これ以上の幸せがあるのだろうか。毎日神に感謝したい気持ちで一杯だった。14へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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