2007年11月25日

小説・優しい背中

22
 柴谷は自分が父親となんら変わらないことに、苦笑いをせざるをえない。
 母親を悲しませていた父親を柴谷は好きではなかった。 柴谷の父親は、不動産業を手広く行っている。確かに出張が多く忙しい身ではあったが、めったに家に戻らない時期もあった。外に女性がいたのだ。当時、母親はいつも暗い顔をしていた。父親は今でこそ、そのような元気はないが、長い間、母以外に常に女性の影がちらついている人生だった。
 それを間近に見ていた柴谷は、結婚したら、自分は、家族を悲しませるようなことはするまい、と密かに誓っていたのだ。
 しかし今になると、紛れもなく自分は父親の血を受け継いでいる、と思えるのである。
 丸山桃子と転勤を機に別れようと思っていても、どうしても切ることが出来ない自分。
 今でも知らず知らず電話をかけてしまうだらしない自分を、これは、きっと血のせいだと思っている。
 柴谷は最近父の気持ちが分かるようになった。父がそれなりに家族のことも大切に思っていたのではないかということ、そのことは、自分と照らし合わせて分かったことである。
 柴谷は、桃子は、あくまでも、外の女性だと心得ている。
 妻の美佐は当然桃子の存在は知らない。
 福岡には、家族同伴で越してきた。福岡は、美佐が生まれ育った所なのだ。実家には美佐の両親が健在である。従って美佐はこの転勤を多いに喜んでいる。
 柴谷は、これを機に、身辺を奇麗に整理しようと本気で考えている所だった。23へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)
posted by hidamari at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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