2007年12月05日

小説・優しい背中

27
 絵里子の1日は、里美に持たせるお弁当作りから始まる。そのため、ウイークデーは毎朝6時に起きることを余儀なくされる。
 今までの絵里子は、お弁当作りから解放される土曜、日曜がどんなに待ち遠しかったことだろう。土曜日曜は絵里子の至福の時だった。
泰三は、ゴルフに出かけることが多いし、里美も部屋にこもっていたり、友人と出かけたりする。自然と自分だけの時間を持つことができたのである。
 といっても、土曜日はプール、日曜日は溜まっている家事を丁寧にしたり、ゆっくりテレビを見たりすることぐらいだったが。ただ、それが何より楽しかった。
 もちろん、時々は、家族3人で外食することもあった。
 週末の楽しみがあるから、ウイークデーが、頑張れていたのだ。
 なのに、最近、やけに土曜日がくるのを早く感じるようになっていた。
 それはきっと、2日間も、柴谷に会えないと思う寂しさだった。
 絵里子は、柴谷といっしょのオフィスにいるだけで充実していた。毎日の仕事にも張りがあった。成績もどんどん上がっていた。不思議と身体の調子もよかった。
 毎朝鏡に向かう時、いつの間にか、にっこり笑って自分を確かめている。皆が言うほど自分が綺麗になったとは思えない。以前と変わったとするなら、きっとアドレナリンが活発に分泌しているのかもしれない。
 柴谷だけには、いつも綺麗に見られたいと思っている。そのためいつも緊張しているからだ。
 その点、以前とは確かに違っている。とても窮屈なのに心地よいのだ。
 柴谷と会えない土曜日はきてほしくないのに、一方ではなぜかほっとしていた。自分では理解できない不思議な感情だった。28へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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