2007年12月07日

小説・優しい背中

28
 絵里子は柴谷と1回だけ結ばれれば、それでいいと思っていた。
 しかし、あの夜の出来事は全てが夢のようで、ちっとも現実味がないのだ。柴谷は絵里子にとって相変わらず遠い存在だった。
 彼のプライベートは、何1つ知らない。携帯の番号も。知る必要もないが、正確には聞けるような間柄にはほど遠いだけだった。
 それなのに、柴谷の身体は隅々まで知っているような気がした。身体に付いている黒子の位置も、こと細かく覚えていた。
 人間の身体には、意外と黒子が多くついていることも初めて知った。
 全裸で身体を重ね合わせた時、お互いの腰の辺りに付いていた黒子が、ぴったり重なり合ったことに、絵里子は偶然気がついた。その時のちょっとした喜び。
 「あら、同じ所に黒子が付いていますね」と、思わず言った時、柴谷は何も返事をしなかった。照れていると言えなくはないが、それほど感動もしていなかったのかもしれない。
 絵里子は無視されたことに、ちょっと傷ついた。少しくらい、感動して欲しかったのだ。
 柴谷は優しいことばも愛情を表すことばも決して口にしなかった。それは絵里子には故意にさえみえた。男の狡さにしかみえなかった。しかしその分、身体や態度では、充分優しかったし、愛も感じることが出来た。
 そのため、絵里子は多いに迷うのだ。
 もしかしたら、もう1度会ってもらえるのでは。
 もう1度ドッキングしたかった。29へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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