2007年12月21日

小説・優しい背中

34
 「ここに座って」
 柴谷は座ったまま椅子を少し後に引いて、自分の膝の上を手で2回たたいた。至極真面目な顔だった。
 「えっ、何をおっしゃってるんですか?」
 絵里子にしては、確かめずにはいられなかった。空想の世界でも想定していなかったからだ。
 「うん?だっこしてあげる」
 やはり真面目な顔だった。
 次に絵里子が何か言おうものなら、柴谷はもう2度とは強要しなかっただろう。
 柴谷の既に躊躇したような顔の変化を、絵里子は見て取っていた。
 柴谷の好意を無にしたくなかったし、恥をかかせたくなかった。
 「重くてもしりませんよ」
 と言って右腕を柴谷の首に回してお姫様座りをした。
 柴谷は絵里子を抱くと、すぐさま儀式のように唇に軽くキスをし、右手でブラウスの上から胸を軽く触った。柴谷の大きな手では、絵里子の胸はあまりにも頼りなかった。絵里子は男の手を感じながら、申訳なさで身の細る思いだった。
 柴谷は、再び軽く唇にキスをすると、
 「ここまで…ね」と言った。
 絵里子は、何かちょっとだけものたりない、と思わなかったわけではない。
 が、冷静になると、ここは支社長室。柴谷には抑制力がちゃんと備わっていたのだった。35へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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