2008年02月07日

小説・優しい背中

53
 人事異動発令書が掲示されたのは、それから3日後のことだった。
 大城絵里子(博多港倉庫へ)南田陽一(東京本社へ)岡田征二(退職)
 本人には夫々知らされていたことだったが、他の社員は皆一様に驚いたようだった。
 特に、絵里子は、社の中では重鎮的な存在で皆から信頼されていた。
 倉庫には、恵理子でなくても他に誰かいただろうにと、同情されるほどだった。
 当の絵里子は、たんたんとしていた。むしろ、新しい仕事へ向けて、意欲さえ沸いていた。
 隣の席の平林啓太が
 「大城さんがいなくなったら僕困ります。大城さんも支社長と会えなくなるのが、寂しいですよね」と、言った。
 それにしても、平林は、どこまで柴谷と自分とのことを知っているのか。
 もっともらしく言うのが、腹立たしくもあるが、たぶん憶測で、かまをかけているのだろう、と思った。
 絵里子は、
 「そうだよ、平林君、分かってるじゃない。心残りはそれだけね」
と笑って受け流した。
 しかし、平林の言ったことは、正に絵里子の今の心情だったのである。54へ

(上記は〈小説・優しい背中〉で連載中)

posted by hidamari at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・優しい背中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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