2008年04月28日

小説・測量士の恋

11
 美鈴はいつもの時間に帰ってきた。
 「こんにちは」
 いつものように明るい笑顔だ。
 光はその笑顔に背中を押された。
 「お帰り。俺ら今日でこの現場終わりなんだよ」
 「そうなんですか」
 こころなしか、美鈴は寂しそうな目をした。
 「元気でいろよ。それからこれ、仕事の時、君の姿がレンズに入ったんで、ついシャッター押したんだ。よかったらあげるよ」
 ことさら何でもないように、軽く言った。
 「えっ!ホントですか!見せてください」
 そういうと、美鈴は光の手から素早くアルバムを取り、シゲシゲと見ている。
 光が悩むほどではなかったのかもしれない。ただ無邪気に喜んでいるのだ。
 「これ、ホントに貰ってもいいんですか?只で?」
 「もちろん、もちろん」
 「有難うございます。…じゃあ、お兄さんもお元気で。来週からは向こう?」
 と、手をバス停の方へ向けて言った。
 「そうだよ。…じゃあな!」
 「さようなら。これ有難う」
 美鈴は、アルバムを高く持ち上げた。
 喜び勇んで帰る美鈴の後ろ姿を、光はしばらく見送っていた。
 そして、渡して本当によかったと、思ったのである。12へ

(上記は、カテゴリー児童短編小説・つぶらなひとみ〈測量士の恋〉で連載中)
posted by hidamari at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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