2008年05月18日

小説・測量士の恋

16
 北田真佐子は光より3歳年上だった。
 ただ、パーマを当ててない黒髪は耳が隠れるくらいの長さで、女学生のようにも見える。とても28歳には見えなかった。
 しかも、目鼻立ちがはっきりした理知的な美人である。
 当然、言い寄ってくる男性はいる。しかし、真佐子はそんな男性には見向きもしなかった。
 決してお高くとまっているわけではないのだが、心が動くことがなかったのだ。
 そんな真佐子の前に現れたのが光だった。
 一目見て心が動いた。そんなことは初めてだった。
 それなのに、今度は相手から無視された。まともに顔も見てもらえない。
 真佐子は、まず自分の存在を知らせたかった。
 そのためにいろいろな手立てを考えた。例えば、彼がいつも買うコロッケ弁当は人気商品だった、売り切れそうになると、そっと確保して、彼が来た時点で「いつものですか?」と何食わぬ顔で差出したりした。先にきた仲間は「あれ、コロッケ弁当まだあったの」と、不思議がった。
 光に対しては、笑顔も精一杯振り撒いたし、ことばもいっぱいかけた。
 それでも、光は真佐子の好意を一向に気がつく風ではなかった。
 そんな時、彼が骨折して、近くの病院に入院していることを知ったのである。
 こんな良いチャンスを逃す手はなかった。自分でも驚く行動力だった。これがきっと恋というものだろう。17へ

(上記は、カテゴリー児童短編小説・つぶらなひとみ〈測量士の恋〉で連載中)

posted by hidamari at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック