2008年05月28日

小説・測量士の恋

18
 2人の結婚は、周囲の誰1人として反対することもなく、スムーズに運んだ。
 光はあれよあれよと進んで行く結婚へのセレモニーに、少しばかりブルーになることもあった。果たしてこれでいいのだろうか。自分の運命があまりにも簡単に決ってしまうのに、ちょっと待ってよ、といいたい気持がなかったといえば嘘になる。
 しかし、世の中には結婚出来ないまま、中年になっている男性もいる。特に最近はそんな人が珍しくなくなっている。それを考えると、自分は幸せなのだ。結局、概ねは幸せな気持であることは、間違いなかったのだから。
 結婚式も新婚旅行も普通に行った。
 両方の親が金銭的にも補助をしてくれたので、新婚旅行はヨーロッパ1周としゃれこんだ。
 結婚生活に入って、初めて真佐子のことが分かった部分もある。彼女は完璧主義で全て自分の思った通りに物事を進めるタイプだったことである。
 結婚と同時に、今まで勤めていたコンビニを辞めて、天神にある社宅のそばのスーパーでレジのパートを始めた。子供が生まれるまで働くという。子供は3人欲しい。夫が45歳になるまでにはマイホームを購入する。等、事細かに計画を立てているようだった。
 毎日お弁当を持たせてくれるし、家事も完璧にこなす。なにより経済観念がことの外しっかりしているのだ。無駄使いはいっさいせず、スーパーでの買物も前もって下調べをし、合理的そのものだった。光の小遣いも3万円と決められた。もちろん、真佐子自身おしゃれもせず、ブランド品等とはほど遠かった。
 光はそんな真佐子が健気で、心から愛しいと思った。
 しかし、それと同時に、自分はもう真佐子が敷いたレールをただ走るだけの人生なのだと、ぞっとする思いもあった。
 ふっと、春風のように爽やかだった美鈴の笑顔が浮かんだ。
 あれは、きっと春の夜にみた夢の中の出来事だったのだ。
 光は、横で眠っている真佐子の安らかな寝顔を改めてしげしげと眺めた。
 「俺は君と一緒に幸せになるよ。これがきっと俺の運命だから」
                了

(上記は、小説・測量士の恋は今回をもって終了しました)

posted by hidamari at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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