2008年06月04日

小説・目障りな女

bQ
 奈緒が手早く化粧を直していると、部屋の温度が上昇するような熱気とともに3人の女性が入ってきた。
 明らかに、その中の1人は他の2人より年嵩で、化粧も濃く、妖艶な色香を漂わせている。彼女の豊満な肉体からほとばしる熱気で室温が上がったように感じるのだ。
 「なーにあの係長、嫌味なことばかり言って!自分の失敗棚に上げてさ」
 「そーよ、私たちが残業までして助けてあげたからこそ、あそこまで出来たのに」
 「私たち独身だから残業大丈夫だけど、山本さん、残業の時、ご家族の夕食はどうされるんですか?」
 奈緒がいるにも係わらず、3人の女性は自分たちの世界で喋り続ける。
 奈緒はその年嵩の女が山本百合子だとすぐ気がついた。
 その瞬間、背中に虫唾が走った。
 百合子も奈緒がそこにいることに気がついたはずである。
 確かに、目と目が合ったのだ。
 奈緒は百合子がすっと身を隠すか、立ち去るだろうと思った。
 ところが、それどころか、これ見よがしに一段と得意げに喋り続けた。
 「私、旦那をちゃんと躾けてるの、私が仕事で遅くなる時は、食事の支度をしてくれるように。ただ、いざという時のために、いつもおかずは冷凍しているの」
 「わあー、山本さん、さすがですね」
 若い2人の女性は、百合子をおだてているのだ。
 奈緒はこの3人と親しく話したことはない。しかし仕事上では顔見知りである。
 3:1で奈緒は圧倒された。
 会釈して立ち去ったのは奈緒だった。
 3人組は完全に奈緒の存在を無視していた。百合子以外の2人は、奈緒のことを気に止めていなかっただけというべきだろう。
 百合子だけはそんなはずはなかった。
 彼女のその大胆不敵な態度が、奈緒はどうしても許せなかった。bRへ

(上記小説は、カテゴリー、短編小説・つぶらなひとみ[目障りな女]で連載中)

posted by hidamari at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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