2008年07月10日

 麦わら帽子
 青々とした田んぼがどこまでも続いていた
 稲のゆさゆさと揺れる音さえ聞えてきそうな
 静まりかえった昼下がりの田んぼの中に
 麦わら帽子が1つ
 ゆららゆららと移動していく
 それに導かれるように
 蜃気楼もゆららゆららと漂っている

 その麦わら帽子に少女は恋をした
 2階の窓辺から麦わら帽子を
 いつもいつも目で追っていた

 今では2階建ての少女の家も
 どこまでも続く緑の田んぼもない
 田の草取りに余念がなかった
 麦わら帽子の少年が
 今年東京の役所を定年退職したんだって
 かわいい孫もいるんだって
 
 いつの間にか月日は過ぎ去っていたのだ
 少女と少年は45年会っていない
 少女は 自分とは無縁に
 少年が良い人生を送っているのを
 今初めて知った
 それが嬉しいことなのか 悔しいことなのか
 今微妙な心情なのだ
 少女はそう 今はすっかりおばあさん

  
 
 
 
 
 
posted by hidamari at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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