2008年07月17日

小説・間口

bP
 室田陸はベッドの上から手を伸ばし、サイドボードに飾っている写真たてを取った。
 両親と弟、5歳の陸。家族4人の記念写真である。
 晴れ着を着て頭にはリボンをつけて澄ましている。2つ違いの弟と陸の七五三のお祝いの時の写真である。
 この頃陸は、周りのものに、大きくなったら何になりたいの、と聞かれると、即座にお嫁さんになるの、と答えていたという。
 さすがに物心がつくと、誰でも時がくればお嫁さんにはなれると分かってきた。それ以降、なりたい職業は新聞記者さんと答えるようになっていた。
 ところが、黙っていても自然になれると思っていたお嫁さんにも、ましてや新聞記者にも、なれていないのである。
 まさかこの年齢になるまで、結婚もせずに1人で生活していようとは、陸は夢にも考えていなかったことだった。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 写真の中の両親は今の陸より若い。
 その両親は既にあの世の人になっていた。
 両親が早くに亡くなったから、人生が狂ってしまったのか。
 幸せだった頃の家族写真を見つめながら、「いいえ、きっとそんなことじゃない、わたしがただボーッとしていただけ、決して父さん母さんのせいじゃないよ」と、自分に言い聞かせていた。bQへ

(上記小説・間口は、カテゴリー〔短編小説・つぶらなひとみ〕で連載中)
posted by hidamari at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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