2008年07月22日

小説・間口

bQ
 陸は小中高大と一貫したお嬢様学校を出ている。父親は大手の新聞社の記者をしていた。しかし、陸が大学4年、弟の祥太郎が大学2年の時、肺ガンであっけなくこの世を去っている。
 幸いに父親にかけてあった生命保険や、退職金で、姉弟は苦労なく大学を卒業した。
 祥太郎は父の後を継いで新聞社に就職し、結婚、子供2人を授かっている。
 一方陸は国立大学の事務局に就職した。使命感を感じて選んだ仕事ではなかったが、それなりに収入がよく、福利厚生もしっかりした職場だった。新聞記者にはなれなかったが、陸は今の仕事にさして不満はなかった。
 祥太郎は所帯を持って東京住いをしている。おのずと残された陸と母親との2人暮らしになった。
 弟に先を越され、親戚からは同情された陸だったが、当人は何もあせっていなかった。時がくれば結婚出来ると信じていたし、母親との2人暮らしはすこぶる快適で、この家を出ていくことなど考えられなかった。それに、陸が結婚して家を出ると、母親は1人になる。母親付きでもいいといってくれる人が、そのうちに現れれないとも限らない。しかし実は、陸はそんなこともあまり真剣に考えたことはない。
 陸がまだ20代の頃は、「私のことは心配しないで、いい人が出来たら結婚しなさい」と言っていた母親も、30代に入ってからは何も言わなくなった。陸の世話をやくことを、生活の糧とし、時々娘と行く旅行を楽しみにしている風だった。
 陸は陸で、母親に家事一切を任せて、自由気ままな生活がとても心地よかったのだ。
 いつしか陸が世帯主、母親が主婦のような生活のリズムとバランスが出来上がっていた。
 年月は、何の不都合もなく過ぎ去っていた。
 しかし、その生活のリズムが、ある日突然途切れることになったのである。bRへ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・間口で連載中)

posted by hidamari at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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