2008年08月27日

小説・間口

bP4
 元来綺麗好きの陸は、部屋の中はいつもきちんと片付けている。しかも新しいマンションに引っ越す時、家具や調度品も新しくしている。
 誰が何時来ても恥かしくない部屋の中だった。
 「さすがに綺麗な部屋だね、高級ホテルみたいだ」と言いながら、一通り各部屋を見てまわった本間が、リビングルームに戻ってきた。
 「お酒、あるんですけど、車だから…」と言って、陸はコーヒーを入れた。
 「ありがとう、頂きます」
 本間は美味しそうにコーヒーを飲んだ。
 2人だけの空間にコーヒーの香りが漂った。間接灯の柔らかい光線は、否が応でもただならぬムードをかもし出していた。
 陸は居たたまれなかった。
 「果物、召し上がります?りんごむきますけど」
 何かしゃべっていたかった。
 「いや、何もいらない。君もこっちへ来て座ったら」とソファーに手を置いた。
 陸は「ハーイ」と、さも何でもないように、ことさら明るく返事をした。
 そして本間の横にちょこんと座った。
 ムードに合わないハイテンションな演技をしている自分が、陸自身とても見苦しかった。
 あわててコーヒーカップを手にした。心を落ち着かせたかった。bP5へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・間口で連載中) 

posted by hidamari at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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