2008年09月14日

小説・間口

20
 さだまさしコンサートは2週間後の土曜日の夜の部だった。
 それにしても、大林がさだまさしファンだとは、嬉しい驚きである。
 近寄り難い雲の上人と認識していたのに、意外と同じフロアー、しかも同じ部屋にいるのではないかという感じさえした。
 趣味が一致することが、こんなに身近に感じさせることを、陸は身を持って感じるのだった。それに引き比べると、本間とは身体の関係から始まった不純な付き合いである。
 そういえば、彼の音楽の趣味は何なのだろう、とふと思った。ジャズが好きだと、まだ2人が付き合うずっと前に聞いたことがある。ジャズにあまり興味がなかった陸は、その時当然、「そうなんだ」と言ったきり、あまり関心を示さなかった。当時陸は、自分が堅実な結婚をするものとばかり思っていたので、妻帯者の彼には、もちろん全く興味がなかったこともある。
 彼から、その後ジャズの話を聞いたことがないのは、陸がジャズにあまり興味を持っていないことを察知して、遠慮しているのだろうと思われた。
 ―本間の妻はきっとジャズが好きなのでは。夫婦でコンサートへ行ったり、CDを聴いたりしているのかも―
 そう考えた時、陸は初めて本間の妻にゼラシーを感じたのだ。
 それと同時に、本間とはそろそろ別れようと、思ったのである。
 その時、既に新たな恋の予感がしたのは否めなかった。
 今度こそ純粋な気持から始まる恋愛だと思った。
 しかし、これも、陸が間口を広げて、受け入れ態勢をいつもオンにしていた賜物だった。21へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・間口で連載中)

posted by hidamari at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック