2008年09月30日

小説・間口

26
 しおりは元々明るい性格で誰に対しても愛想がよい。普段から陸に対してもフレンドリーな態度でよく話しかけてくる。職場では、2人は気の合う仲間である。ただ、家庭持ちのしおりとは、興味の対象や行動範囲が自ずと違ってくるので、プライベートの付き合いは全くない。
 時々、しおりは陸のプライベートを聞いてくることがある。
 彼女に心を許しているわけではない陸は、その都度当り障りのない程度に受け答えをするのである。
 しおりにしてもさして知りたいわけではなく、話のなりゆきで、挨拶みたいに聞くだけのことであるから、その内容に関心があるわけではない。
 そんなことは分かっているはずなのに、コピー室で、突然後から
 「明日からの連休、室田さんはどうされるんですか?」
と、声をかけられた時、不意を突かれたことと、一番ゆううつな質問だったことに、陸は自分でも驚くほど不愉快な気持にさせられたのである。
 コピーをするため、しおりはコピー室に入ってきた。そこには先客である陸がコピーをしていた。そこで、沈黙を破るため何かしゃべらなくてはと思い、タイムリーな話題を言ったまでのことだった。
 「ああーびっくりした」
 「すみませーん、驚かせて」
 「すぐ済むからちょっと待っててね」
 「どうぞ、ごゆっくり」
 陸はしおりの質問が聞えなかったふりをした。27へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・間口で連載中)

posted by hidamari at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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