2008年10月07日

小説・間口

29
 それから1週間、ゴールデンウイーク中、陸は自宅で引きこもっていた。
 大林は無理だとしても、本間からは電話くらいかかってくるかもしれないと、どこかで期待していたが、やはり何の音沙汰もなかった。切なくて寂しい1週間だった。
 連休が明けた。
 嫌な時間は過ぎ去った。
 陸は再び明るい笑顔を取り戻した。
 職場では毎日陸の視界の中に本間が居る。彼はいつも通り優しく接してくれた。
 大林とも、会えば会話をかわした。
 2人との付き合いは、今まで通り何も変わることはなかった。
 遊ばれているという意識はない。むしろ、自ら人生を楽しむために、2人とは付き合っているのだと思っている。
 これからもいい男に出会ったら、臆せずどんどんアタックするような予感がする。
 何人とでも情を交わせそうな気さえする。
 いけないこととは思っていない。
 ただ、楽しい時間が増えると同じくらい、寂しい時間もどんどん増えていくだろう。
 悪のない退屈な人生より、楽しかったり寂しかったりする人生を選んだだけのことである。
 「おかあさんごめんね、私のこの生き方、見守ってくれるよね。私、誰も恨んだりしないし、自分のことはちゃんと責任をもつからね」
 陸は、母親のサヨにだけは、申訳ないと思っている。古い考えのサヨはきっと陸のこの生き方が理解出来ないだろうから。
 元より、サヨがいなくなったからこそ、陸に出来た生き方だった。
                  完
(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・間口で連載してきましたが、今回をもって終了しました)

posted by hidamari at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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