2008年10月12日

小説・父親の役目

bP
 朝早いというのに飛行場のロビーはけっこう人の往来がある。
 松山秀男は、娘の小百合が7時50分発で上京するのを飛行場まで車で送ってきていた。
 土産品売り場は、ぼちぼち店開きに取りかかっているものの、まだ買物が出来る状態ではない。
 「何か欲しい物、あるか?」
 秀男は売店を横目に見ながら、さっきから、ムスッとして一言も口をきかない小百合の機嫌をとるかのように言った。
 「ない」
 小百合は憮然として答えた。
 「夏休みはまだ20日以上も残っているんだろう、もう少しゆっくりしていけばいいのに」
 小百合は無言で、じろりと秀男を睨んだ。
 「悪かったね、パパとママのせいだろう?喧嘩ばかりしているからね」
 「今さら何を言うの。わたしが物心ついたころには、もう仲が悪かったじゃない」
 「そうだったかなあ」
 「もういい、どうにもならないことだから」
 「今日は中国へ飛行機が飛ぶ日か?団体客がやけに多いなあ」
 話題を替えたかった。
 事実、人が多いのは国際線ロビーの方だった。
 「パパ、もう帰っていいよ、後は飛行機に乗るだけだから」
 「そうか、じゃあ着いたらママに電話しなさい」
 「分った、ママとなるだけ喧嘩しないようにね。ま、無理だろうけど」
 秀男もそれは無理だろう、と思った。
 なぜならとっくに離婚することは決めていた。それに小百合にも弟の賢にもことあるごとに言ってきかせていたことだった。bQへ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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