2008年10月20日

小説・父親の役目

bS
 秀男には好きな女性がいた。高校時代の1年後輩である。郷土史研究部というクラブ活動で一緒だった。高校を卒業すると秀男は地元の国立大学へ、彼女は地元の短大へ進学し、卒業すると、彼女は地元の銀行へ勤めた。
 秀男は彼女とずっと恋人同士として付き合っている。彼女と結婚の約束をしているわけではないが、裏切ったことには違いない。秀男にしても、未だに彼女の方を愛しているのだから、別れのことばなんか言えるはずはなかった。
 それからは、彼女から電話があっても何やかにやと理由をつけて、会わないようにするしかなかった。
 最初はなんの疑いも持っていなかった彼女も、あまりに不自然な秀男の態度の変化に、徐々に察するようになる。2〜3ヵ月たった頃は、すっかり諦めたのか、何の連絡もなくなった。泣き言一つ言ってこなかったのは、秀男にとってかえって切ないことだった。
 ただ、秀男は、それだからといって、美代子とすぐ結婚したわけではなかった。
 たった1回の過ちで一生が決るのはあまりにも過酷だった。
 まず、真面目に彼女と向き合ってみようと思ったのだ。
 真面目に付き合うにしても、結婚はやはりまだ先のことだった。どこかで、結婚に発展しなければいいとさえ思っていた。bTへ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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