2008年10月24日

小説・父親の役目

bU
 それはあまりにも唐突な告白だった。秀男は一瞬聞き違いと思った。
 「えっ!今何て?」
 「ごめん黙ってて、私病院へ行ったの、3ヶ月だって。母子手帳もらわなくてはいけないの。貴方に了解を…」
 秀男は、目の前が真っ暗になり腰が抜けていくのを感じた。美代子の言葉が次第に遠のいていった。ただ、赤ん坊が生まれる、赤ん坊が生まれる、ということだけが頭の中を駆け巡った。
 「こんなことになってごめんなさい」と、美代子は小さな声で言った。
 「謝ることではないだろう」秀男も小さな声で言った。何もかも腹立たしかったが、こうなったら結婚するしか道は残されていなかった。
 「そうだよね、貴方の子供だもの、素晴らしいことだよね。私本当は嬉しいんだ」と、美代子はホッとしたように言った。
 秀男は、これから先に控えている転勤、結婚、出産のことを考えると、気が滅入って仕方なかった。
 秀男と美代子が結婚したのは、このように切羽詰った出来事だったのである。bVへ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック