2008年11月03日

小説・父親の役目

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 美代子は、正直、姑のヒデをあまり好きではなかった。それは実家の母親とあまりに違っていたからかもしれない。母親とは価値観が同じなのか、友達感覚で言葉が通じた。ヒデとは、何もことば使いのことではない、政治に関しても文化に関しても社会通念に関しても、どこかかみ合わない所があった。
 なにしろヒデは新興宗教の熱心な信者である。決して美代子に入信を勧めることはしないが、宗教第1の考えが身体にしみついていて、知らぬ間に何事に関しても、美代子に押し付けるふしがあるのだ。最初は話を合わせる振りをしていたが、だんだんうざったくなるのは避けられなかった。どうしたら、家へ訪ねてくるのを拒否出来るかばかりを考えるようになった。
 美代子はだんだん口数を減らしていった。どんなに話し掛けられても、自分の意見を言わなかった。笑顔も見せなかった。無視したのである。
 孫の小百合と賢もどんどん大きくなっていった。お祖母ちゃんよりお友達を求め始めた。
 母親が祖母に対して抱いている感情をそれとなく察しているのか、小百合も賢も時にヒデに対してあからさまに厭味な言動をするようになった。そんなある日、
 「お祖母ちゃん、用もないのに何しに来るの?もう来ないで、ママが困るでしょ!」
と、言っているのを聞いた時、美代子はもうこれで一巻の終わりと思った。
 ところが、ヒデは笑いながら
 「あら、わたしがきたら迷惑なの?それなら小百合と賢が家へ来てくれる?」
 と、言った。
 「お祖母ちゃん、お経ばかり詠んでいるからいやだ」
 と返されても
 「そんなことないよ、あなたたちが来たらちゃんと遊んであげるよ」
 と、にこやかに答えた。
 しかし、ヒデが心の中では深く傷ついたのは間違いがなかった。
 というのも、それからヒデは、2度と美代子たちの家を訪ねてくることはなかった。たとえ用があっても電話で済ませるようになっていったのである。10へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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