2008年11月06日

小説・父親の役目

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 小百合と賢が小学校へ入る頃には、美代子は秀男の実家とは殆んど絶縁状態だった。ただ、秀男には、休みとなると、ヒデからしょっちゅう呼び出しがかかった。
 事ある毎に新興宗教のお祈りの会に出かけるヒデが、送り迎えを秀男に頼むからだった。その時は、決ってガソリン代といって、まとまった金をくれた。タクシー代で散財するより、息子にお金をくれてやった方が、息子が喜ぶだろうと思っていたし、秀男は秀男でそれが親孝行だと思っていた。
 美代子がヒデと折り合いが悪く、実家に寄り付かないことに、秀男は何も言える立場ではなかった。
 なぜなら、それは秀男にも責任があることだった。
 というのも、ヒデとの仲をとりなすことはいっさいしなかった。また、美代子の実家に顔を出すこともしていない。
 秀夫も美代子の実家とは絶縁状態だったのである。
 お互いを思いやることをお互いが全くしていないのだから、お互いが文句を言えるはずがなかったのである。
 夫婦は同じ屋根の下に暮らしているが、お互い別々の行動をしていた。
 会話をすれば喧嘩になるので、だんだん会話を避けるようになっている。
 用事があるとすれば、子供に関することだけだった。そんな時は子供を通じて話した。そんな術を自然に習得していた。
 父親勇作が、脳梗塞で倒れたのはそんな時だった。11へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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