2008年11月28日

小説・父親の役目

16
 そんなことが約1ヵ月も続いた頃だった。
 その日は初雪が舞い散る寒い日だった。勇作の身の上に異変が起きた。肺炎を併発し危篤状態に陥ったのである。ヒデは医者から、家族にその旨を知らせるように告げられた。
 ヒデ、秀男の家族、優太郎の家族に見守れながら勇作が息を引き取ったのは、その3日後のことだった。
 葬儀やその後の法要がたんたんと行われた。
 世の中はクリスマスや年末のあわただしさで賑わっていたが、松山家はひっそりとした年の瀬だったのはいうまでもない。
 特に美代子は、松山家の中で、殆んど蚊帳の外に置かれていた。彼女も自ら入っていこうとしなかったこともある。7日7日の法要には、お坊さんが来られる時間だけ に、かろうじて顔を出す程度だった。
 ヒデの妹は面と向かって、「美代子さんはまるでお客さんみたいね」と、皮肉たっぷりに言った。ヒデは「いいのよ、秀男が悪いのだから」と妹をたしなめるように言った。
 美代子は何を言われても仕方ないと思っていたので「すみません」といって、身を細めるだけだったが、思わぬヒデのことばにちょっと戸惑った。
 ヒデはどこまで分かっているのだろうか。

 久しぶりに秀男が職場から真っ直ぐ自宅へ戻ってきたのは、49日の忌明け法要が済んで、既に新しい年も2月に入ってからだった。17へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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