2008年12月06日

小説・父親の役目

18
 家族が4人揃って囲む久しぶりの食卓も、終始静まりがちだった。ただ秀男はこんな時もお酒を飲んだ。美代子は料理があまり得意ではなかったが、主婦を12年もやっていると、それなりに様にはなってきている。今日はたまたま子供たちが好きなおでんを作っていた。このおでんだけは秀男も好物だった。
 食卓にあるコンロの上の鍋は、湯気が立ち上り、だしの香り、具の香りが漂う。それだけで、幸せそのものの夕げの風景である。
 美代子は、今日おでんにした偶然が、ほんとうに嬉しかった。
 家族は、もくもくと箸を動かし、口を動かした。
 しかし、美代子だけはいっこうに食欲がなかった。
 これから、秀男が何を話すのか、あれこれ想像すると、どう考えても良いこととは考えられない。まさか…とは思うのだが、離婚ということばが、頭に浮かぶ。知らず知らずのうちに涙が込み上げてきて、食欲が沸く筈などなかったのである。
 食事が終わると秀男はいち早く、食卓からリビングルームのソファーに移動した。
 小百合と賢も、つられてソファーに座った。美代子も覚悟を決めてソファーに座った。テーブルを挟んで秀男と子供2人が対面し、美代子は横の1人掛けに座った。19へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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