2008年12月11日

小説・父親の役目

19
 「小百合と賢も、とっくに感じていると思うが、パパとママのこと」
 秀男はおもむろに話し出した。
 「あなた、何よ、突然、わたしは何も感じてないよ。それに何も子供まで巻き込むことではないでしょ」
 不安に思っていても、今まではどこか半信半疑のところがあった。あってほしくないことだったので、秀男との深刻な話しは避けてきたのに、一足飛びに子供たちの前で何かことを起そうとしている秀男が、美代子には許せなかった。
 泣くつもりはないのに、涙は容赦なく後から後から頬を伝わった。
 「このままでは君だって苦しいだろう?1番は俺のためだが、ママや子供たちのためにも、
もうこれ以上ママとの結婚生活は出来ないと思っているんだ」
 秀男は、もう決めていた。今日は何が何でも自分の意志を家族に伝えるために帰ってきていた。美代子にだけではなく、2人の子供たちにむけても言っているつもりだった。
 小百合と賢はうつむいたきり、唇を噛みしめていた。
 「何を言い出すの、これからも今まで通りでいいじゃない、あなたは何も変わらなくていいのよ。それとも他に結婚したい女が出来たとでもいうの?」
 これだけは絶対言うまいと思っていたことばだった。今までにも疑えば思い当たる節もあったのだが、恐くて聞けなかったのだ。それに、外に女がいても、夫が家庭を捨てさえしなければ、それでいいという最悪のことまで考えて、口にしなかったことばだった。
 それなのに、勢いで言ってしまった。
 とにかく美代子は子供のため、生活のため、絶対離婚は避けねばならなかった。20へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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