2008年12月15日

小説・父親の役目

21
 「これはずっと前から決めていたことで、好きな女性が出来たからではない。申し訳ないがパパの我がままなんだ。どうしてもママとやっていけない。ただ、小百合と賢は大事に思っている。だから今日まで言い出せなかった。小百合と賢に決めて欲しい。パパとママのどちらと暮らすかを」
 誰が聞いても理不尽な秀男の言いぐさだった。
 美代子はこれが現実だとはとても思えなかった。何かの間違いだと思った。
 「あなた冗談でしょう?そんな勝手なこと許されるはずないでしょう?わたしは納得できないからね。そんな話し聞いたことないよ。わたしは絶対別れないからね」
 立て続けに言いながら、自分が可哀想でたまらなかった。世界中で一番哀れな女になり下がった気がした。夫に愛がないことは感じていたが、本気でここまで思っていたとは。悔しくてたまらなかった。
 それまで何も言わずにうなだれていた小百合が、涙をいっぱい浮かべた目を拭おうともせず、秀男に向かって言った。
 「パパ、ずるいよ。いきなりパパとママのどちらかを選べなんて。わたしも賢もパパとママの離婚、認めないよ。絶対イヤだから。1人を選ぶことなんか出来ないよ。ママが嫌いになったから離婚?勝手すぎるよ。子供がほんとうに大事なら、親の責任を果たしてよ。せめてわたしと賢が大人になるまで、パパとママの離婚は許さないからね」
 小百合はそう言うと、今度は賢に向かって
 「ね、賢だってそう思うでしょう?」と言った。
 賢も涙をいっぱい浮かべていた。そして大きく頷いた。22へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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