2008年12月19日

小説・父親の役目

23
 「あなたは自分の幸せのために家族を捨てるというの?」
 捲くし立てている美代子のことばが遠くに聞えているが、小百合の「親の責任を果たしてよ」ということばが心に鋭く突き刺さっていて、美代子が何を言っているのか頭に入らなかった。
 「小百合も賢も、ママたち別れたりしないから、心配しないでもう部屋へ行きなさい」
 と、秀男をひとしきり罵倒した美代子がふっと気を取り直して言った。
 「行こう」と賢の肩に優しく手をかけると、小百合は、動こうとしない賢を、かかえるようにして2階へ連れていった。
 「あなた、小百合が言ったように、離婚するなら賢が20歳になってからね。その時が来たらわたしも離婚を考えるわ。それまでは…」
 「これまでと一緒でいいというのか、おまえは」
 「ええ、そうよ。あなたに女がいてもかまわない」
 「ホントにそれでいいのか」
 「ただし、子供は作らないで。あなた、小百合と賢が大事だと言ったわね。でも外に子供が出来たらきっとそっちに気がいって、小百合たちのことは二の次になる。それだけは許せない」
 「なに?俺にパイプカットでもしろっていうのか」
 「そう、それ、それよ。それが私の条件よ、女と別れてなんて言わないから」
 「へー、考えてみるよ」
 ちょっとしたはずみで口を滑らしたことばだったが、なぜか、秀男には現実になる予感があった。
 というのは、秀男にも、小百合と賢以外にもう子供はいらないという気持があったのである。24へ

(上記小説は、カテゴリー{短編小説・つぶらなひとみ}の中の、小説・父親の役目で連載中)

posted by hidamari at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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