2010年02月19日

読後感「すきやき」

 楊 逸(ヤン・イー)著 2009年11月発行
 彼女は、外国人というハードルがあるにも関わらず、普通に日本の芥川賞を受賞している、実力のある中国人女性作家である。
 現在45歳。
 私がこの本に興味を持ったのは、著者が中国人だったから。
 元々私は、日本在住外国人なら西洋人に興味があった。
 ところがこの10年くらいの間に、アジア人にも同じように興味を抱くようになった。
 なぜなら、我が地域で、若い中国人をよく見かけるから。
 町内にある大学には留学生がいるし、ブロイラー工場や縫製工場にも、実習生として働いている若い女性たちがいる。
 彼らを、目の当たりにすると、彼らはどんな気持ちで日本を選んだのだろうか、とか、日本の文化に馴染んでいるのだろうか、とか、日本のことを本当に好きなのだろうか、とか、考えさせられるのである。
 この「すきやき」という小説は、フィクションとはいえ、著者自身が体験したことも入っているのではないだろうか。
 その点で、中国人の本音が分かるのが、何より興味深いのだ。
 高級すきやき店でアルバイトをする主人公は、中国人の留学生である。
 日本人と結婚している姉夫婦と一緒に暮らしている。
 彼女が経験する日常の出来事を、ただ淡々と語っているだけのことなのだが、それが小説としておもしろいのは、中国人の感性で書いてあるからに他ならない。
 すきやき、という料理に対しても、きものに対しても、日本人が思うそれとは少し違う。
 そこには、文化の違いという垣根がある。
 しかし、人間同士の心のふれあいによる感情は、国境はないのだということがわかる。
 主人公は、このすきやき店でアルバイトをすることにより、日本文化を習得すると同時に社会を知り、大人の世界を知り、男女のきびを知り、自分自身の恋心を知り、自分を発展させていく。
 軽妙なタッチで綴られているこの文章は、実に読みやすく、あっという間に読んでしまった。
 ちなみに、この本が、今年初めて私が読んだ本である。

posted by hidamari at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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