2010年06月14日

ミニミニ小説・牡丹

bR
 城ノ内は42歳という若さで教授である。
 フランスの大学で教鞭を取っていたのを、この大学の目玉にしようと学長が招へいしてきた有能な男性だった。
 学生の間では当然人気があったが、助手の間でも相当なものだった。
 アサミが専任助手として配属されると、助手の間で羨望が高じていじめの対象になったのは、ある意味自然の成り行きだったのかもしれない。
 しかし、城ノ内にそれほど関心があった訳ではないアサミにとっては、このいじめは納得のいくものではなかった。
 ただ、今まで仕えていた教授が、殊の外、上下関係を重視する人で、日々屈辱的な扱いを受けていたこともあり、その劣悪な職場環境を免れることは、この上ない喜びだった。
 なぜなら、城ノ内はおおらかな性格で、細かいことにいちいちうるさく言う人ではないというもっぱらの噂が、アサミの耳にも入っていたからである。
 そんなこともあり、アサミはこれを機会に、楽しく仕事が出来ることだけを心掛けていた。
 教授と助手との間に格差があるのは純然たる事実である。
 教授の、その高いプライドの中の領地に踏み込むことなく、信頼関係を結んでもらうことが、アサミの大きな願いでもあり、助手として大成していくことでもあった。
 毎日、城ノ内の満足した顔が見たくて、編集の仕事に携わっていた。
 その日も、とっくに就業時間は過ぎていたにも関わらず、1人仕事に没頭していた。bSへ

(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載中)

posted by hidamari at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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