2010年07月21日

ミニミニ小説・牡丹

bU
 城ノ内は大和ホテルへ向かってどんどん歩いていった。
 周りはすっかり夜のとばりに包まれていた。
 アサミは、なぜはっきり断れなかったのだろうという後悔にかられていた。
 それでも城ノ内を見失わないよう、城ノ内の足元を見ながらひたすら付いていった。
 城ノ内の大きな革靴は外側がかなり擦れていた。
 イメージと違ってかっこ悪かったが、なぜかホッとした。
 ホテルへ入る時も、ロビーを通り過ぎる時も、エレベーターの前に着くまで、城ノ内は後ろを振り返らなかった。
 その間、このまま付いて行かなくてもいいのではないかという思いが、ずっと頭の隅に引っ掛かっていた。
 「教授があまり早足なので見失いました」と、後で言い訳しても、十分成りたつだろうと思えたからだ。
 しかしそれは、気が利かないどん臭い女だということを露呈するようなものだった。
 何より嫌なのは、仕事もそうなのだと思われることだった。
 アサミは、これは仕事の一環なのだと思うことにした。
 すると、急に気が楽になったのである。bVへ

(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載中)

posted by hidamari at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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