「きっと学校の近所に飼い主がいるはずだ。校門の横に〈カメを預かっています〉という貼り紙を出そう。飼い主が見つかるまで、教室にある水槽に入れて、みんなでめんどうみよう」と、先生は言いました。
そして笛をピーと吹きました。
「集合!子取り鬼の続きをやるぞ!」
「先生!授業が終わるまでここに放っていていいですか?」
「それまでは、大丈夫だろう。置いときなさい」と先生は言いました。
男の子は、そっと私を床の上に置きました。
私は、一時も早くここを逃げ出さないと大変なことになる、と思いました。
幸い窓からすんなり外に出ることができました。
来る時はそろそろ歩いてきたのですが、帰りはほうほうの体でお家へ辿りつきました。
そして、洗面所へ駆け込み、不安というより恐怖心いっぱいで鏡の前に立ちました。
そこには、私の姿はなく、下の方に小さなカメの姿がありました。
恐れていた通り、紛れもなく私はカメの姿になっていたのです。
そんなことってあるのでしょうか。
ワナワナと座りこんでしまいました。
これから私はいったいどうなるのでしょうか。
こんな時なのに、私は自分がとても疲れていることに気がつきました。
何年かぶりに外に出たことや、走って家に帰ってきたことが、とても身体に堪えたのだと思います。
とにかく眠たかったのです。
ひとまず寝ようと思いました。
2階の自分の部屋に戻ると、なぜか机の上に水槽がありました。
その横にはもちろん私がいつも寝ているベッドもあります。
私はカメの姿をしていますが、人間です。
迷わず布団の中にもぐりこみました。
そしてそのまま泥のように眠ってしまいました。bTへ
(カテゴリー〈夢小説・子取り鬼〉に連載)
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