2010年08月23日

ミニミニ小説・牡丹

bW
 その大学はパリの郊外にあって、学生数3000人程度のパリ美術専門大学、もちろん城ノ内はフランス語でも大学名をいったが、アサミに覚えられるはずはなかった。
 城ノ内は「返事は今でなくていいから、ゆっくり考えて返事してください」と、言った。
 夢ではないかと思うくらい唐突な話しだったし、ちょっと考えただけでも、とても受け入れられる話ではなかった。
 即座に断るつもりだったが、城ノ内はアサミの心を先取りするように、「今教室でやって貰っている仕事の延長みたいなものだから、頼みますよ」と、言うと、すぐ返事をしないでというように、椅子を元に戻し2杯めのジョッキを飲み干した。
 アサミは簡単には断れないのだ、と思った。
 1杯目のジョッキ半分くらいは美味しいと思って飲んだビールが、すっかりまずく感じたのは、何もアサミがアルコールに弱いせいばかりではないことは分かっていた。
 それは、何かもっともらしい断る理由を考えなければという思いで、頭がいっぱいになったからだった。bXへ
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)
posted by hidamari at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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