2010年11月18日

ミニミニ小説・牡丹

bP5
 そんなアサミに城ノ内から突然電話がかかってきたのは、9月になってからだった。しかもそれはアサミのケイタイにである。城ノ内もアサミの電話番号を削除していないのだと分かって、アサミはそれだけで、もう舞い上がっていた。
 城ノ内は、「今日時間ある?フランス出張の慰労会をしようよ」と、言った。
 アサミは飛び上がらんばかりに嬉しかったのに、「えっ、今日ですか?」と、心とは裏腹の思わぬことばを口にしていた。
 心の準備が出来ていなかった。
 今日はおしゃれをしていない、デートするならちゃんとしたい、という気持ちもあったかもしれない。
 「都合が悪いの?それなら次にしようか」と、城ノ内はあっさり言った。
 ちょっと待ってと思ったが、考える間もなく、
 「すみません」と言ってしまった。
 「じゃあ、また」と言って、城ノ内は電話を切った。
 茫然自失のアサミは、今何が起きたか、落ち着いて改めて考えてみた。
 そうすると、何で断ってしまったのか、悔やまれてならなかった。
 次にと城ノ内は言ったが、2度と電話かかってこないような気がしてならなかった。
 今すぐに自分から電話をかけて「行きます。今日都合をつけます。連れていってください」と言うしかないと思った。
 胸の鼓動は音をたてて波打っていた。(bP6へ)
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)
posted by hidamari at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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