2011年01月07日

ミニミニ小説・牡丹

bP8
 なにしろアサミには初めてのことだったので、その時、さまざまな考えが頭をよぎった。
 「既婚者とそんなことになるのは不倫でしょう?とんでもない」というのがまっさきだった。
 次に、昼間、城ノ内から唐突に誘いの電話を受けた時のことを思い出した。
 言下に断って、すぐに後悔した。その後恥を忍んでOKの電話をしたのは、断れば2度と誘われないだろうと思ったからだ。
 今回も、ここで断ったら2度と誘われないだろうと思った。
 フランス出張の慰労会が2度あるわけない。
 城ノ内にとっては、ホテルに誘うことも慰労の1つぐらいにしか考えていないのだろう。
 そうであったら、断固断るべきだ。断っても、彼がダメージを受けることはまずないだろう。
 そう思う一方で、「断っていいの?後でまたきっと後悔するよ」という思いがあった。
 それがだんだん膨らんでいった。
 「1度だけアバンチュールをしてみるのもいいじゃない?何もない人生よりましよ」という思いが、どんどん大きくなり、ついに消えることはなかった。
 「どうする?迷ってるの?」
 城ノ内はアサミの心を見透かすように言った。
 「いえ、いいですよ。部屋へ行っても」
 アサミは、決心した。
 「彼が好きだから、後はどうなっても絶対後悔しない」と。bP9へ

(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)

posted by hidamari at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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