2008年日本映画 原作 東野圭吾 監督 西谷 弘 主演 福山雅治 柴咲コウ 堤 真一 松雪泰子
私は元来ミステリーというジャンルがあまり好きでない。
なぜなら、殺人者がいて、それを暴くというのが基本なので、最後が必ず不幸になるから。
私はハッピーエンドが好きだから、どんなに彼の本が評判になっても読む気がしない。
ただ、「手紙」だけは日曜版新聞小説だったので読んだ。
最初に殺人があって、既に刑務所で服しているところから始まるこの物語は、人間愛と社会生活をテーマにしたドラマだったので、ミステリーという感じがなく、当時、日曜がくるのを心待ちにして読んだものだ。
今回の「容疑者Xの献身」は、最初に殺人が行われるが、その流れの詳細は最後まで明かされなかった。
私が思ったのは、殺人を犯した松雪さんが扮する母娘は、なぜ自首する道を選ばなかったのか。
そうしていれば、正当防衛が認められ、無罪になった可能性もあるのに…。
これが小説と言われればそれまでだが、実際にはありえない設定なので、よくある2時間サスペンスドラマのような軽い感じがした。
容疑者(石神)が、自分勝手な思いで、献身をたてに、自分の数学頭脳を駆使して描いた論理を展開していく。もしかしたら楽しんでいたのかもしれない。
それに対抗して、真実を暴くのが、大学の同期で成功者である物理学者湯川である。
成功者と脱落者の心理描写は頷ける。
側からはそんなに悲観することではないと思えることが、死をも決するようになっていた容疑者は、最後に人を愛することを知る。
そしてそれが、自分の命をかけることにまで発展するとは。
ただ彼は、自分の献身が実を結ぶことだけを考えた。
まことに身勝手である。
献身を受けた人が、どれだけ負担になるかを考えることが出来ないのが、人間として未成熟で、単なる数学バカだった。
というのが哀しい結末だった。
結果、誰一人として、有利を得なかった。
松雪さん、堤真一さんの演技が光っていた。
石神役がもっと不細工な人ならもっとよかった。
なぜなら、容姿を気にしていた設定だが、堤さんはどんなにしょぼくれていても、やっぱいい男だもの。
2011年01月09日
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