2011年01月12日

ミニミニ小説・牡丹

bP9
 アサミは、自分が意外と度胸があることに戸惑っていた。
 33歳という年齢がそうさせるのか、決めた以上ウジウジしたくなかった。
 一晩を楽しもうと思った。
 城ノ内が念を押すように「俺、妻子がいるけど、…いいんだね」と、言った。
 何もそんなこと言わなくても、と、ちょっとムカッとしたが、「ええー、大丈夫です」と、笑顔で応えた。
 改めて、これでいい、後で絶対後悔しない、と自分自身に言い聞かせて、城ノ内に抱かれたのだった。
 夏休みが終わり、大学は前期試験期間に入り、忙しい毎日になった。
 城ノ内は、学内では、アサミに対して今までとなんら変わることなく接したが、 ただ、アサミが2度目を誘われることはなかった。
 10月に入ると、大学は後期授業に入り、就職が決まっていない4年生は就職活動に余念がなかった。
 美術史学科という特殊な分野では、就職先も限定される。
 教師だったり、出版会社だったり、情報関係だったり、良い所に就職出来るのはごく僅かである。
 城ノ内は、自分のゼミを取っている学生の就職先を親身になって探してやった。
 専門を生かせない一般会社でも積極的にリサーチして、学生を送り出した。
 アサミはそんな城ノ内の姿をみて、ますます頼もしく思い、より以上に好きになっていった。
 しかし、城ノ内の方は、もはやアサミに対して男女の情愛がないのは歴然としていた。
 アサミが描いた通りのシナリオだった。
 後悔は出来なかった。bQ0へ
 
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)

posted by hidamari at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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