2011年02月14日

夢小説・再会

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 「譲治君すっかりりっぱになったわね」
 「そんなこともないけど、…緑子ちゃんがまだ結婚していなかったなんて驚いたよ」
 きっと、譲治君の家の人が面白半分に告げたのだと思った。
 「譲治君はもちろんお子さんもいるのでしょう?」
 「うん、5人いる。上は高2で1番下はまだ2歳」
 緑子は声を呑んだ。
 もしかしたらまだ独身ではと云う期待がなかったといえば嘘になる。
 だから本当は「結婚は?」と聞きたかったところをあえて「子供は?」と聞いたのだ。
 そんな微妙な心に、この5人という数字には、驚きを通り越して、何それ!と可笑しかった。
 2人の過去の一切が、まるでなかったことのように錯覚した。
 「へえー、早くに結婚したんだ」
 「うん、上京して働きながら二部の工業大学へ行った。日曜毎にギターのサークル活動もやっていて、そこで保母をしていた今の嫁と知り合ったの。彼女、実家が埼玉だったので、1人暮らししていて、そのうちに2人で住むようになって、向こうの親に会う前に子供が出来て、…いわゆる出来ちゃった婚。僕大学を卒業して都庁の建設部に就職したんだ。都庁に入る時も頑張ったけど、入ってからも建設業関係の資格を7個も取ったんだよ。50歳になったら、都庁を退職して埼玉で建設業関係のコンサルト会社を設立するつもりでいる。嫁の実家が建設業をしているんだ。嫁は今も子育てしながら保母をしている。何しろ5人子供がいるから、頑張らないとね。自分で事業すると、収入は3倍にはなると思うし」
 緑子は、ただすごいと思った。
 譲治君と運命の別れをして、夫々の環境がこんなに違ってしまったなんて。
 このことを緑子の父親はどんな風に感じているのだろうか。
 中学生くらいの孫がいて当然なのに、2人の娘は揃って独身、未だに親元にいる現実を。
 一方、娘の元彼、しかも自分が引き裂いた譲治君は、りっぱに成功して、5人の子持ち。
 緑子は可笑しくてたまらなかった。
 20年の歳月が過ぎた今の2人、それが不思議と可笑しかった。
 「緑子ちゃん、もしかしたら僕のことが原因で結婚しなかったの?」
 「とんでもない。何度か恋愛もしたし、お見合いもしたよ。結局縁がなかったのね」
 ほんとうのことだった。
 20年ぶりに、時の経過を再確認して、その人生の面白さに緑子はただ可笑しかった。
 だって、5人も子供産むかなぁ?…
    了
 (カテゴリー、夢小説で連載中の〈再会〉は終了します。朝方見る夢を小説にするのは面白いです。ただ、忘れないうちに書きとめることが大変なのですが)

posted by hidamari at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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