2011年02月25日

ミニミニ小説・牡丹

bQ2
 結局アサミは、誰にも相談することなく、悶々とする日を送っていた。
 1番にしなければならないのは、直接の上司である城ノ内に妊娠のことを言うことではないかと思った。 そのためには、アサミにそういう相手がいて、しかもその彼とは結婚せず未婚の母になることを、打ち明けなければならなかった。
 それを何のこだわりもなく、自然に話さなければならないのだ。
 その上で、産前産後休暇、育児休暇を取ることを報告し、承諾を得なければならない。
 何より、彼には何の関係もないアサミ自身のプライベートのこととして認識させることが重要なのだ。
 そのハードルを越えなければ、全てのことが先に進めないような気がした。
 もし、城ノ内の子供であることが分かったら、絶対に産むことは許されないだろう。
 産むと決めたからには、誰にも邪魔をされないよう万全を期したかった。
 産前産後休暇等は、未婚でも、婦人の労働法で認められていることも、既に調べ上げた。
 後は、出産のために粛々とことを進めるだけだった。
 その一歩として、彼に何の疑いも持たせないようなストーリーを考え出さなければならなかった。
 毎日そのストーリーを考えた。筋書ができた。次は自らそれを信じ込むことだった。
 そして、どんなことばを浴びせられても動揺しないように訓練を重ねた。
 時はどんどん過ぎていった。
 11月に入り、アサミはつわりの苦しみを味わった。
 同居している母親のミナは、まだ何も気が付いていないようだ。
 保険外交員をしているミナとは、すれ違いが多く、休日以外は顔を合わせることが少ないのが幸いしていた。
 ただ、母子手帳の取得を、これ以上延ばす訳にはいかない、ここらが潮時だと思った。bQ3へ
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)


posted by hidamari at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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