2011年04月07日

読後感“きことわ”

 朝吹真理子著
 新潮社 2011年1月発行 第144回芥川賞受賞

 話題になってから図書館に申し込んだのだが、案外早く廻ってきた。
 それもそのはず、活字が少なく150ページ足らずの本だった。
 取りつきやすく、読み始めると、あっという間に読み終えた。
 著者の姿をテレビで見た時、セレブそうで親しみにくい、しかもとても若い人だったので、どんなにか気どった小難しい小説だろうと思っていたのだ、が…。
 とんでもない思い違いだった。
 いかにも昭和の感じがする、おっとりとした上品な作品だった。
 私にも、主人公貴子と永遠子の関係のような幼なじみの女の子がいて、その子との懐かしい数々の思い出がある。
 そして私も、度々、夢と現実、過去と現在が交差する時がある。
 私たちは来る日も来る日も一緒に遊んだ。近所だったので、お互いの家族も親密だったし、お互い家の中の隅々までも知っているような間柄だった。
 ある晩私は、なぜか、その子が妊娠している夢をみた。翌日そのことをその子に言うと、「あら、不思議ね、私もあなたが妊娠している夢をみたよ」と言ったのだ。「うそでしょう」と言っても「ほんとうだ」と言い切った。私たちはまだ小学校の2〜3年生だった。
 今でもその子の言ったことが、ほんとうだったのかは信じられないが、この小説の中でも、2人が夢と現実を共有したりするくだりがある。
 永遠子は夢をよくみる。過去のある時期のことをよく見る。その頃のことが、事細かに蘇る。
 この小説にストーリー性はあまりない。
 あるとすれば、春子(貴子の母親)が癌の闘病者で、若くして亡くなっているということくらい。
 主人公の2人は、少女時代のある時期の夏休みを、貴子の家の別荘で共に過ごした。しかし、春子が亡くなった時を境に2人は疎遠になり、25年ぶりで再会するところから、物語は始まる。
 25年のブランクはすぐになくなる。2人の間では、常に、過去と現在が往来する。
 この小説が認められた大きな要因は、表現力の豊かさだろう。
 なんともいえない上品さと温かさがある。
 思ったことは、子供時代がいかに幸せだったかということと、幼なじみってつくづくいいものだ、ということだった。

posted by hidamari at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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